中国での就職活動は、アメリカと同様にインターンシップによる人材確保が積極的に行われています。中国は日本と同じくインターシップ後発組でしたが、なぜ重要視されているのでしょうか。中国のインターンシップの現状と、大学生を取り巻く環境や、就職事情についてご紹介します。
爆発的に増える新卒者数ゆえに就職は買い手市場
中国の大学は日本の私立大にあたる民営大学よりも、国公立にあたる国営大学のほうが多くあり、民営の独立学院も含めたとしても、国営大学のほうが3倍程度多いです。また、日本のセンター試験に該当する中国の試験「高考(ガオカオ)」の実施に先立って、大学全体の募集人数が決められています。
そのため、新卒者の数は安定していたはずですが、経済発展が進んだことから次代の人材育成のため、大学の定員を広げる政策が採用されており、2001年では100万人ほどだった大学新卒者が、2018年では800万人を超える規模になっています。
急激に増え続ける新卒者に見合った求人数が確保できず、失業率の上昇が懸念されるほど学生にとって厳しい状況です。しかし企業にとっては優秀な学生をじっくり選出できる買い手市場となっているのです。
なぜ中国でインターンシップが重視されているのか
中国では日本よりも厳しい学歴社会のため、入った大学で人生が左右されると言われるほど、学歴と就職が直結しています。
例えば、外資・国内の大手企業は、優秀な学生の獲得のため、211工程重点大学(優先的に教育レベルを向上させる大学教育改善プロジェクトに選んだ全国100の大学)に絞り込みをかけた採用を行うなどのスクリーニングを行っています。
そして、優秀な学歴を持った学生の中からさらに優秀な人材を選抜し、採用するために行われているのがインターンシップなのです。
中国では、日本のように新卒者を1から育てるという考え方はあまり一般的ではなく、また新卒者か既卒者かはさほど気にされておりません。それよりも仕事の経験があるかどうか、どれだけ即戦力になるのかを重視しています。
そのため、実務または実務につながるインターンシップを積極的に実施し、優れたパフォーマンスを発揮した学生には内定を出すなど、ポテンシャルの高さをインターンシップによって見極め、能力が高い学生を獲得しているのです。
さらに、インターンシップによってミスマッチを防ぐことができ、学生に会社への理解を深めることや、学生を通した口コミによる宣伝なども期待できるため、企業にとってインターンシップは若手人材獲得という面でメリットが大きいのです。
学生がインターンシップに望むことは「キャリア」である
中国では仕事をするうえで賃金を一番大事と考えるため、高い賃金を提示してくれる会社を選択し、いずれ、さらに高いポジションや報酬を提示してくれる企業へと転職します。そのため、求職者は自分が企業を選択するときには、高い賃金とキャリアを積むことができるかどうかを重視するのです。
企業側も採用にあたってはキャリアや能力を重視するため、就業経験のない学生には不利な状況と言えます。学生側はインターンシップに参加することで、自分が望むキャリアを得られる企業なのかを考えて選択しています。
そのため、企業はインターンシップで優秀な学生の見極めをし、また優秀な学生を他へ逃さないためにも、キャリアにつながるような実務に関係する内容が求められるのです。このようにインターシップは企業側にも学生側にもメリットがあるのです。
日本の学生が中国のインターンシップに参加することもある
日本から中国へインターンシップに参加する学生も年々増えており、サポートするサービスも充実してきました。日本から参加した学生が、インターンシップを通して中国の現状を肌で感じ、さらに海外での活躍を望むならば、いずれは日本の本社と中国の現地法人を結ぶブリッジ人材となる可能性もあります。
優秀な人材を確保するにはインターシップの内容を充実させること
買い手市場を背景に、より優秀な人材獲得のため、中国国内・外資の大手企業は積極的にインターンシップを実施しています。日系企業が中国で優秀な若手人材を獲得したいのであれば、同じくインターンシップを積極的に活用すべきです。
そのためには、中国の大学生を取り巻く環境や、学生の意識などをしっかり把握し、企業にとっても学生にとっても有効なインターンシップとなるように、内容については熟考する必要があるのです。
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