2018.9.27
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人材マネジメント

日本型「同一労働・同一賃金」のスタンダードな位置づけは?

(写真=Shawn Hempel/Shutterstock.com)
(写真=Shawn Hempel/Shutterstock.com)
2018年7月6日に交付された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法案)」の中には、「同一労働・同一賃金」が含まれていますが、今回はこの日本型の同一労働・同一賃金の解説と、世界の同一労働・同一賃金とを比べ、今後、検討するべき課題について考察します。

政府主導で進められる同一労働・同一賃金

現在政府主導で進められている同一労働・同一賃金は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に存在する不合理な待遇差を解消するためのものです。簡単に言えば、正社員と契約社員、派遣社員が同じ仕事をしているのであれば、同じ給料を払う仕組みにするというものです。

2018年7月19日に台湾の労働部(労働省)が、労働に関する行政指導の三原則を発表しました。それは「派遣従業員と正社員の賃金を同一にする」「人材派遣会社と雇用主が、労災や賃金補充についての共同責任を負う」「人材派遣会社と労働者が、短期間の雇用契約を結ぶことを禁じる」というものです。

中国は2014年にすでに「労働者派遣暫定規定」という法律を施行しています。この法律には同一労働・同一賃金だけでなく同一の福利厚生も義務付ける規定や、派遣労働者を全従業員の10%以内に収めることを義務付ける規定などが盛り込まれています。中国のこの法律に比べると、日本は明らかに遅れていると言わざるを得ません。

「同一労働・同一賃金」実現のための課題

2018年時点の日本経済はアベノミクス効果で改善傾向にあるとはいえ、今後、大幅に成長するという保証はどこにもありません。そのため無理に同一労働・同一賃金を導入して非正規雇用労働者の賃金を引き上げると、業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。だからといって正規雇用労働者の賃金を非正規雇用労働者並に引き下げたら、正規雇用労働者のモチベーションは下がり、組織としてのパフォーマンスも下がるかもしれません。

こうしたジレンマを抜け出すには、成長が期待できる事業には、外部からのプロフェッショナル人材を投入することや、逆に不採算事業には、そこで働いていた従業員に対して、社内や社外に新たな仕事を見つけ出す施策を投じることが求められるなど、従来の硬直的な雇用から柔軟な人材活用への転身をいかにスムーズに実現するかにあるのです。

人事が見据えるべきは欧米型の同一労働・同一賃金?

日本の同一労働・同一賃金は、同じ企業や団体に所属する正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間でだけ適用されるものですが、欧米のスタンダードな同一労働・同一賃金は市場全体で適用される考え方です。これは別々の企業で同じレベルの仕事をしていれば、企業の規模に関わらず同じ給料が支払われるというものです。

そのため、日本を含めた東アジア諸国が進めている同一労働・同一賃金は、欧米型とは違うものだと考えてもよいでしょう。グローバルスタンダードが欧米であるものの、同一労働・同一賃金をどう考えるかは企業の海外戦略によるといえます。

政府主導の同一労働・同一賃金は遅れすぎている

欧米の同一労働・同一賃金は、日本型とは一線を画したグローバルスタンダードとして確立されています。したがってグローバル展開を目指すのであれば、日本型の同一労働・同一賃金の実現はもちろんのこと、できるだけ早い段階で欧米型の同一労働・同一賃金を組織に浸透させるために動き始める必要があるかもしれません。企業の戦略や世の中の動向に合わせてどのような施策を取るのかを検討してみてはいかがでしょうか。
 

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