2018.9.27
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採用・育成

アジアに進出する日本企業が直面する人事における3つの課題とは?

(写真=Lallanan/Shutterstock.com)
(写真=Lallanan/Shutterstock.com)
グローバル化が進み、海外に進出する日本企業も増加しました。業種も企業規模も進出する国もそれぞれ違うはずなのに、多くの日本企業がぶつかりやすい壁が存在します。その一つは人事面です。そこで今回は、日本企業の進出が多いアジアで直面しやすい人事における3つの課題を一緒に考えてみましょう。

3つに集約されるアジア進出企業の人事の課題

企業が海外進出するメリットを考えてみると、新たな市場開拓や生産の低コスト化への期待があります。しかし、それらを実現するためには進出する国の政治や文化、宗教など、現地の環境に対応して現地法人をローカライズ(現地化)することが求められます。

これまでに海外進出を果たした日本企業の多くがローカライズを進めてきました。しかし、肝心の人材のローカライズは海外企業と比べると遅れているのが現状です。そんな人事における課題は以下の3つに集約されます。

課題1:現地管理職の育成

欧米企業は海外拠点の経営をナショナルスタッフ(現地人材)に任せることも珍しくありません。しかし、日本企業は現場のトップである部課長級の管理職さえも日本人スタッフが多く、ナショナルスタッフの育成が進んでいない面があります。

その理由としては下記があります。
・ ナショナルスタッフとコミュニケーションがうまくとれない
・ 信用するにはリスクが高い
・ 日本人同士の方が安心する

それ以外にもさまざまな理由があるものの、組織構造や人事評価、給与体系など、日本から持ち込んだ方法を守りがち、理解を求めるためのコミュニケーションが不足しているなど、異文化環境下への進出であることの理解不足から、事前の対策が不十分であったことが根底にあります。

企業が海外進出を成功させるためには、現地の環境や事情を熟知している人材を登用するだけではなく、管理職へと昇進できるようナショナルスタッフを育成し、権限委譲することが必要になります。

国によっては倫理観が欠けていたり、セキュリティ意識が低かったりと、コンプライアンス意識も日本とは異なります。しかし、内部統制の仕組みを変え、違反時の罰則を設ければ権限委譲は不可能なことではないでしょう。

課題2:従業員の高い離職率をカバー

日本と海外ではキャリア形成や職務に対する考え方に大きな違いがあります。日本では終身雇用制が崩れ、成果主義が広がったことでさまざまなキャリアや生き方が見られるようになってきましたが、そもそも海外ではキャリアアップのために転職を繰り返すことには抵抗がありません。つまり、離職率が高いのは、ナショナルスタッフの管理職への登用が少ないことも原因のひとつです。

また、海外では個人のパフォーマンスの結果を評価しますが、チームでのパフォーマンスの結果も個人の評価とする日本での人事評価制度のままでは、ナショナルスタッフには不透明な人事評価だと捉えかねられません。そうなれば、離職したいと考える従業員が後を立たないおそれもあるのです。

そうならないためには、定期的な面談など話し合いをすることにより、人材育成に対する考え方のギャップを埋めることが必要です。

課題3:労働生産性が低い

日本では「会社に入社する(就社)」と考えますが、外国では「職に就く(就職)」という考え方をします。そのため、海外では就職時には担当職務が決まっており、自分がやるべきことに対して集中して仕事を行うため、契約以外の仕事をすることはありません。

日本では企業が掲げた目的を果たすために、自分の契約以外の内容についても関連部署との調整や話し合いを行います。そのために細やかに対応できるメリットがありますが、担当職務以外の作業が発生するため、ここの生産性が高まりづらい特徴があります。

就職が当たり前の海外では日本特有の就社を奇妙に感じたり、納得できないこともあるといいます。そのため、あいまいな分業を効率よく進められず、日本から持ち込んだやり方では生産性が低くなる場合もあるのです。

職務の明確化、正当な評価とそれに見合う報酬、明確な昇進条件など、人事評価を可視化することで改善でき、結果としてモチベーションが高まり、生産性が向上する可能性があります。

3つの課題をクリアしてナショナルスタッフの生産性をあげる

ナショナルスタッフのパフォーマンスをあげるのは、現地の文化や慣習、環境を把握することが大事です。また、自社にあったローカライズ方法を事前にどれだけ準備するかにもよります。そのため、事前の調査や赴任する日本人スタッフの育成も必要でしょう。

海外進出でナショナルスタッフの生産性をあげるためには、異文化環境の中、異なる価値観を持った人材との協働・協業は避けて通れません。現地の文化や環境としっかり向き合い、自社にあったローカライズが実現できるように準備を行うことが肝心です。せっかく海外に進出するのですから、上記の課題を踏まえて海外進出前に緻密な戦略を検討しましょう。
 

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