グローバルで勝ち抜きたいのであれば、社員の能力を高めるような仕組み作りが求められます。しかしグローバルであればあるほど採用するスタッフの人数が多く、国や地域によって文化や慣習が異なるため、そのぶん管理が煩雑になりがちです。日本では旧来型の年功序列の評価体制を敷かれる場合がありましたが、今後グローバルで勝ち残る企業には、グローバルタレントマネジメントが求められます。それはなぜでしょうか。
グローバルタレントマネジメントが求められる理由
タレントマネジメントとは、働く従業員たちの持つスキルや能力を把握し、そのパフォーマンスを最大限に発揮するための人事配置や取り組みを戦略的に行うことをいいます。
日本国内での展開であれば、人事部は氏名、性別、住所、資格などの属性を中心に人材管理をすれば事足りましたが、海外に展開していくグローバル企業は属性だけでは管理が困難です。なぜなら、グローバル展開をすることで海外拠点のスタッフが増加し、日本国内で展開していた時とは比べ物にならないほどのたくさんの人事データを扱うことになるからです。さらに日本人だけでなく、現地スタッフの採用もあり、日本とは違う文化や習慣も考慮しつつ教育も進めていかなければなりません。
煩雑ではあるものの、グローバルに勝ち残る企業になるためには、グローバル基準に合った人材管理の仕組みが必須です。そこで、グローバル化による人材管理の課題のソリューションとして、従来の属性の管理だけではなく、客観的に人材を管理し活用するためにグローバルタレントマネジメントが用いられるようになったのです。
将来を期待できる人材の流出を防ぐには
グローバル展開している企業の大きな課題のひとつとして、将来を期待する人材の流出防止があります。人材流出を防ぐための人材管理のツールとしても、グローバルタレントマネジメントは効果的です。では、人材流失を日本人スタッフと現地外国人スタッフの2つの側面で考えてみましょう。
● 日本人スタッフの人材流出を防ぐ2つのポイント
1つ目は、海外派遣の人事フローの確立です。海外派遣された従業員が、赴任後にそのスキルを企業のために最大限に活かせる人事フローを作ることです。
2つ目は、海外派遣社員の選定・研修・フォローの確立です。選定は海外派遣の経営目標に合った人材を選定します。研修では語学や現地の情報、健康、メンタル面をフォローします。海外赴任中だけでなく赴任後のフォローも大事です。
● 現地外国人スタッフの人材流失を防ぐ2つのポイント
1つ目は、現地外国人の働き方に合った対応をすることです。例えば、アジア諸国では自分の持つ専門的なキャリアを活かして、より高い報酬を求め転職してキャリア形成をするという考え方があります。そのため専門性を高めるキャリア形成ができる人事制度と、キャリアップに伴う報酬アップを検討するといいでしょう。
2つ目は、現地拠点の経営トップから幹部までの主要なスタッフに現地外国人を登用していくことです。それは、同じ現地スタッフが幹部にまで昇進しているという事実が、従業員のモチベーションアップにつながるからです。優秀な人材を育成するために、留学生を勤務させて教育している事例もあります。
グローバルタレントマネジメントにHRテックの力を活用する
グローバルタレントマネジメントを推し進めていけば、グローバル基準で勝ち残れる可能性は見えてきます。グローバルタレントマネジメントで取り扱う膨大な情報を可視化するにはHRテック(Human Resources Technology)を活用するのが有効です。ちなみに、HRテックとは採用や育成、人事、評価などの人事データを、最新のテクノロジーで管理・活用することを言います。
HRテックが急速に進展した背景としては、クラウド型サービスやスマートフォンなどのタブレット端末の普及、AI(人工知能)などのテクノロジーの進化や、ビッグデータを高速に取り扱えるようになったことがあります。なお、HRテックは採用、人材選定、人材流出の防止、社員の健康管理など、グローバルタレントマネジメントを有効に活用するツールとしてグローバル展開する企業に採用されています。
グローバルタレントマネジメントで人材を活かす
グローバルに展開する企業は従来の日本企業の人事制度から脱却し、HRテックを活用したグローバルタレントマネジメントを採用することでグローバル基準に近づきます。グローバルタレントマネジメントによって、グローバルな人材を可視化し把握することで、彼らの能力を最大限に活用できるのです。今後、海外進出をする・すでに海外進出をしているものの現地の人材流出が激しい企業は、グローバルタレントマネジメントを検討してみてはいかがでしょうか。
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