2019.9.14
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人材マネジメント

トップタレントを確保するエンプロイヤー・ブランディング

(写真=tadamichi/Shutterstock.com)
(写真=tadamichi/Shutterstock.com)
FacebookやAlpahbet、Amazonなど、トップタレント(優秀な人材)を多数保有する企業の共通点は、強力なエンプロイヤー・ブランディングです。「トップタレントが確保できるかどうかは、会社の評判で決まる」といっても過言ではありません。エンプロイヤー・ブランディングは、新たな企業のPR法として注目されています。

今回は、エンプロイヤー・ブランディングの成功例や成功させるための4つのステップについて見ていきましょう。

優秀な人材の確保戦略「エンプロイヤー・ブランディング」

「この企業で働いてみたい」と誰もが願う……そんな企業イメージを創り上げ、人材をひきつけるトップタレント確保戦略が、エンプロイヤー・ブランディング(Employer Branding)です。強力なエンプロイヤー・ブランディングを通したトップタレントの確保・維持は、財務上の利益や業績といった枠組みを遙かに超過した、多大なる恩恵を企業にもたらします。

世界最大規模のビジネス特化型SNS、Linkedinが2017年に発表した報告書「Global Recruiting Trends」では、世界35ヵ国の4,000人近いHRマネージャーの80%が、「優れたブランド力は、トップタレントへのアピール材料になる」と考えていることが明らかになりました。また、キャリアの選択肢の幅が広がった近年、消費者間で高評価を受けている企業に応募者が集中する傾向が見られます。

エンプロイヤー・ブランディング成功例―Alphabet、amazonなどIT企業が多数

エンプロイヤー・ブランディングの分かりやすい成功例は、「働きたい企業ランキング」の上位にランクインしている企業でしょう。LinkedInが、求職者からの関心度の高さや雇用後の定着率を評価したランキングの2019年版では、国・地域によって順位は異なるものの、AlphabetやAmazonなど、IT企業が多数の国でトップ10入りを果たしました。

米国ではFacebookやSalesforce、Delloitte、日本ではOracleや楽天なども求職者に人気があります。これらの企業は共通して、やりがいのある仕事とともに、従業員の努力や業績に報いる高給与や充実した福利厚生を提供している傾向です。社会における高待遇への認識は、エンプロイヤー・ブランディング力を強化する要因の一つでもあります。

エンプロイヤー・ブランディングを成功させる4つのステップ

「エンプロイヤー・ブランディングは大手企業向け」という先入観は、正確ではありません。組織の規模や業種には関係なく、どのような企業でも優れたエンプロイヤー・ブランディングを築くことができます。

1.SNSを活用して広範囲に情報を発信する

従来の求人広告は、対象の範囲が限定されているうえに、「募集側の一方通行的な告知」といったイメージが定着しています。求職者を「この企業で働いてみたい」という気持ちに駆り立てるためには、モチベーションや興味を刺激する要素が必要です。そこで、近年インターネットを利用した「ソーシャル・メディア・リクルーティング」が、急激に活発化しています。

LinkedInに代表されるビジネスSNSに限らず、FacebookやYou Tube、Twitterなど、さまざまなSNSをリクルーティングツールとして活用し、できるだけ多くの人材候補にアピールすることで、トップタレント確保のチャンスが広がります。

2.親近感や興味の持てる情報で、エンゲージメント効果を狙う

ブランディング力を強化するためには、よりリアルで親近感や興味の持てる情報を発信することが重要です。例えば、実際に現場で仕事をしている従業員が日常的な会社の風景や仕事の内容、新製品・サービスの紹介、革新的な取り組み、社内イベントなど、求職者のモチベーションアップにつながる情報の発信を行います。

また、求職者が気軽に問い合わせや応募できる環境を提供することで、エンゲージメント効果を狙うのです。

3.企業文化やコアバリューを職務内容に盛り込む

同じ職務内容でも、表現の仕方によって、受けとり方に大きく変わります。例えば、ソフトウェア開発者の募集要項で、職務内容や給与、勤務時間などが長々と並べられているものと、基本情報を簡潔かつ分かりやすくまとめ企業文化やコアバリューが盛り込まれているものでは、ブランディング力に差がつくでしょう。

しかし、関心を引く目的で内容を大げさにし過ぎると、ターゲット層である求職者の警戒心を煽り、逆にターゲット層ではない求職者からの応募が増えるリスクもあります。目的はあくまで、「ターゲット層の求職者に、自社で働くメリットのアピールすること」である点に注意しましょう。また、プロファイルや求人検索で頻繁に使用されるキーワードやアルゴリズムを配慮することも、たくさんの求職者にアピールするうえで非常に重要です。

4.定着率を高める努力を怠らない

確保した人材は、企業文化を形成し、コアバリューを尊重し、組織のミッションを遂行する重要な原動力です。従業員のエンゲージメントなしでは、エンプロイヤー・ブランディングの成功はありえません。トップタレントの定着率を高める手段として、即戦力と長期的な成長を考慮したオンボーディング・プロセスを充実させることは重要です。また、スキルや知識向上の機会など、従業員が常にステップアップできる環境を整備し、従業員の満足度を高める努力が企業側に求められます。
 

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