2019.7.15
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国別トレンド

Teslaの企業文化に学ぶ「PSA(問題解決アプローチ)」

(写真=Grzegorz Czapski/Shutterstock.com)
(写真=Grzegorz Czapski/Shutterstock.com)
米フォーブス誌の「世界で最も革新的な企業ランキング」で、AmazonやNetflixを抑え4位に輝いたTesla Motors(テスラ・モーターズ)。その卓越した持続的な革新の原動力は、創業者でありCEOのイーロン・マスク氏が推進する「PSA(問題解決アプローチ)」にあります。

Teslaが常に革新的である理由

Teslaは「世界の持続可能なエネルギーへの移行を加速する」 をミッションに掲げ、2003年の設立以来革新的な技術と商品で、絶え間なく自動車産業に旋風を巻き起こしてきました。

単に高性能なEV(電気自動車)を生産するだけではなく、消費者の購買意欲をそそるEVを設計・生産している点がTeslaの特徴の一つです。

「おもちゃの車のようにみえる」「ガソリン車やディーゼル車に比べて速度が遅い」「わずか数マイルで充電が切れる」といったEVに対するネガティブな評価を、著しい技術の進歩と高級感あふれるスタイリッシュなデザインで塗り替えてきました。

EVの新境地を開拓しただけでなく、次世代の自動車開発をリードする存在として、自動車産業で異彩を放っています。

企業文化を構築する6つの要素

類まれな革新力はTeslaの企業文化として定着しており、Teslaは以下の6つの要素に基づいて、事業の継続的な向上と革新に貢献することを全従業員に求めています。

1 機敏に行動せよ
2 不可能と思える難題に立ち向かえ
3 常に革新的であれ
4 「第一原理」に基づいて推測せよ
5 経営者の視点で考える
6 すべての従業員が参加している

第一原理思考をベースとする「PSA(problem-solving-Approach)」

カギとなるのは、マスク氏が実践・推奨する「PSA(革新的な問題解決アプローチ)」です。自動車産業における経歴や実績がなかったマスク氏は、複雑な問題に対してPSAを効果的に活用することで、EVをメインストリームに押し上げることに成功しました。このアプローチは、6つの要素の一つである「第一原理に基づいて、解決法を探りだす」というもの。

第一原理思考とは、問題について認識しているすべての「事実」に積極的に疑問を投げかけ、白紙の状態から新しい知識や解決策を生みだす思考戦略です。

Teslaトラック開発におけるPSA活用例

一例を挙げると、マスク氏は自社のトラックの開発にあたり、PSAを活用することで「ライバルより優れたトラックを開発するだけではなく、可能な限り最高のトラックを開発する」というミッションに焦点を当てました。

PSAでは仮定や憶測に依存せず、白紙の状態からヒントを探します。そのため、「どのようにトラックを改良するか」という抽象的な質問ではなく、「優れたトラックに必要な部品は何か」という、より具体的な質問とその回答が必要です。

回答を立証する証拠を収集し、そこから仮説を立て、最終的な結論に導きます。さらに結論に対する反論を試み、その反論が結論を覆せなかった場合は「仮説」が正しい、つまり問題の解決法を発見したということになります。

その結果、Teslaは数々の困難を乗り越え、電動トラック『セミ』の開発に成功しました。マスク氏は同じ手法を活用して宇宙スペースベンチャー企業Space Xを設立し、2018年には最強の新型ロケットと言われる「ファルコン・ヘヴィ」 の打ち上げ、2019年4月には全 ブースターの着陸に成功しました。

HRトレーニング・プログラムにも採用

PSAはマスク氏自身の経験から、組織全体も革新力を強化する手段として、Teslaの従業員に浸透しています。従業員はHRトレーニングプログラムの一環として第一原理思考について学び、業務の遂行にPSAを用い、次々と新たな技術や商品を生み出しています。

自動車の排気ガスを原因とする環境問題の解決策を講じ、最先端のEVを開発し続けるというTeslaの能力は、こうした企業文化を反映したものです。企業の文化的特徴は、ビジネスの強化に役立つ戦略的チャンネルの役割も果たします。
 

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