インドやマレーシアといった経済急成長国を抑え、アジアで事業を展開している日本企業の「最も魅力的な投資先」に選ばれたベトナム。
力強い経済成長力に加え、政府が支援する「アジアの生産拠点」としての役割強化、購買力の向上など、秘められたグロース・ポテンシャル(成長の可能性)が注目を浴びています。
ベトナムの経済状況とグロース・ポテンシャル
ビジネス・ニュース・サイトNNAが2018年11~12月に、アジア圏の日本企業にとって「最も魅力的な投資先」を調査した結果、630の回答者のうち35.7 %がベトナムを選びました。2位のインド(17.8 %)の2倍以上という圧勝ぶりです。
ベトナム統計総局の発表によると、同国のGDP成長率は2018年1~9月期に7%に達し、2019年の目標を6.6~6.8%に定めるなど、高成長が続いています。政府は企業や投資家の誘致策として、市場開放や国有財産の売却など、積極的な対外開放に取り組んでいます。
これほど大幅な経済成長を遂げている国は少なく、中国以外の新たな投資拠点「チャイナ・プラス1」として注目されているのも納得できます。
アジア最強のグロース・ポテンシャル?
過去10年にわたって、急激な経済成長を維持してきたインド。成長が鈍化した中国に代わり、12億人を超える巨大市場や中間層の拡大が注目されており、優秀な人材が低人件費で確保できる「タレントの宝庫」として、多くの国外企業がR&Dの拠点を置いています。
一方、2020年までの先進国入りを目指して「第11次マレーシア計画」を実施中のマレーシアでは、2018年に同国史上初の政権交代が行われました。
今後の動きが気になるところですが、政権交代後に発表された計画の改定版では、「ガバナンスの透明化」に加えて「経済成長の増進」や「人的資本の能力開発」「公平な地域発展の追求」などが追加されたことから、海外企業の誘致強化も含めて国際的なビジネス環境が整備されていくことが予想されます。
このように急成長中のアジア強豪国を抑え、ベトナムのグロース・ポテンシャルが期待されている背景には、著しい経済成長力のほか、中国やASEAN諸国へのアクセスに便利な地理的条件、拡大中の消費者市場、豊富な天然資源などがあります。
日系企業進出増加率は前年比7.6%増
外務省領事局政策課の調査によると、2017年10月時点でアジア圏に進出していた日系企業(本邦企業または日本人が出資している海外の企業)数は5万2,860社。そのうちベトナムに進出した日系企業は1,816社と割合としては少ないものの、増加率は前年比7.6%増とアジア圏の平均(6.4%増)を上回っています。
ベトナムで事業を展開する日系企業は製造業がほぼ半数を占めており、キャノンやパナソニック、ホンダ、トヨタを含む合計801社が、事業拠点や工場をベトナムに置いています。次いで進出率が高い業種は小売業で、2017年にホーチミンにセブン‐イレブン第1号店をオープンした、セブン&アイ・ホールディングス、ハノイやホーチミンに3店舗をもつイオンなど、157社が進出しています。
ベトナムで会社を設立する際の注意点
ベトナム進出を検討している企業は、「現地の法令を遵守する」という基本的なこと以外に、注意すべき点がいくつかあります。
人材の確保・育成
人材の確保・育成は、海外進出を試みるすべての企業に共通する課題です。「ベトナムの労働者は会社に対する貢献意識や忠誠心が低く、好条件の職に流出しやすい」という難点が指摘されています。
このように人材を育成しにくい環境で、いかに良質な人材を確保・維持するかが成功の明暗を分けるでしょう。
現地コスト
日本よりも人件費や物価は安いものの、「会社の設立・運営は予想以上のコストがかかる」と想定しておくべきです。
例えば、日本から駐在員を派遣するにあたって駐在員(および家族)の住宅費・教育費の負担などを考慮すると、給与が日本の約2倍以上に膨れあがることも珍しくありません。
税務
ベトナムの税制で特に注意を払うべき点は、「移転価格税」と「外国契約者税」です。
「移転価格税」とは、例えば関連企業間の取引において、取引価格が通常の価格と大きくかけ離れている場合、「利益を移転させている=移転価格」と見なされて課される税金です。
「外国契約者税」は、例えば日系企業や日本人がベトナムの企業やベトナムの個人と契約を交わし、ベトナム国内でサービスの提供(=取引)を行った際、発生する報酬に対して課税されるものです。
ほかにも、不十分なインフラの整備がビジネスに影響を及ぼす可能性など、想像しうる様々なリスクへの対応策を検討する必要があります。
念入りな市場調査を通して、メリットとともにリスクも事前に把握しておくことで、海外進出のプロセスを円滑にできるでしょう。
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