2019.2.24
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採用・育成

人事担当が気になる若者の「内向き志向」の実態と解決策

(画像=Yeexin Richelle/Shutterstock.com)
(画像=Yeexin Richelle/Shutterstock.com)
海外進出している、あるいは今後予定している企業の経営者や人事担当者にとって、海外勤務してくれる人材の確保が課題となっています。その一方で、海外勤務を嫌い国内で勤務し続けることを望む「内向き志向」の若者が増えていると聞いたことのある人も多いでしょう。

今回は若者の内向き志向の実態を分析した上で、企業としてどう解決できるのかお伝えします。

若者は内向き志向?二極化が進んでいるというデータも

近年、若者が海外勤務を嫌う傾向が強く、「内向き志向」が進んだと指摘されることが増えています。これは主観的な大人の若者批判だけではなく、客観的な調査データからも明らかになっていることです。

産業能率大学が実施した新入社員を対象とした2017年の調査によると、「あなたはこれから海外で働いてみたいと思いますか?」との質問に対して「どんな国・地域でも働きたい」と回答したのがわずか11.8%、「働いてみたいとは思わない」と回答したのが実に60.4%となっています。国・地域によらず海外で働くことを嫌がる新入社員が大半なのです。

しかも、海外勤務を嫌がる割合はこの10年あまりで急増しています。2004年度の時点では「働いてみたいとは思わない」が28.7%にすぎませんでした。それが2010年には49.0%と半数近くに達し、2015年度には過去最高の63.7%にまで上昇しました。

こうしてみると若者の内向き志向がこの10年あまりで顕著になったように感じられますが、逆の印象を与えるようなデータも存在します。たとえば、日本人の海外留学者数は右肩上がりなのです。

日本学生支援機構の調査によると、2009年度の日本人留学者数が約3万6,000人だったのに対し、2017年度には約10万5,000人と3倍弱にまで増加しています。また先の新入社員調査でも、留学経験のある層に限れば「どんな国・地域でも働きたい」「国・地域によっては働きたい」と答えたのが4分の3以上もいたのです。

以上を踏まえると、最近の若者が内向き志向であるというより、海外志向の強い層と全くない層がそれぞれ増加するという二極化が進んでいると推測されます。確かに内向き志向も多いのですが、海外進出する人材を探す際に手を挙げてくれそうな若者も確実に増えています。

内向き志向をもたらすリスク回避志向

若者が海外を嫌がる理由を尋ねると、そこには「リスク回避志向」がうかがえます。先の新入社員調査によると、海外で働きたくない理由として「自分の語学力に自信がないから」を挙げたのが63.6%、「海外勤務は生活面で不安だから」を挙げたのが47.0%と、この2つの回答率が圧倒的に高くなっています。英語力や現地への適応に不安を感じる層の多さが、若者の内向き志向につながっていると推測できます。

実際、日本人の英語力の低さはたびたびメディアやインターネット上で話題になります。TOEIC Listening & Reading Testの国別ランキングを見ると、500名以上が受験している47ヵ国のうち日本は39位で、平均スコアは517点です。文部科学省の分析でも、ライティング・スピーキングの能力、そして学生の英語学習意欲の低さが課題として挙げられています。

このように、海外勤務を嫌がる感覚の背景には、英語力の低さと英語嫌いによるリスク回避志向があると考えられるのです。

グローバル人材の育成を目指す企業が打ち出すべきメッセージ

グローバル人材を育成したいと考える企業は、社員の英語力向上と英語コンプレックスの解消に力を入れる必要があります。最近ではTOEICや英検などの学習費用や受検料、あるいは英会話スクール・オンライン英会話サービスの受講費を補助する企業も増えてきています。こうした補助で英語学習を促すことで、英語力向上を実現できる可能性は高いでしょう。2012年に英語公用語化を果たした楽天では、2015年に社員のTOEIC平均スコア800点をクリアしています。

社員教育を行う際、全社員に対して英語力向上を動機づけるのか、あるいは海外勤務させたいと考える特定の社員や部署に対してのみ英語力向上を動機づけるのか検討する必要があります。全社的な英語公用語化には社内の抵抗も予想されるだけに、海外売上の状況によってメッセージは変わってくるでしょう。あくまで日本をベースとするなら一部だけでも問題ありませんし、グローバル展開を目指すならトップダウンで強力に英語公用語化を推し進める手もあります。

英語学習ができる環境の構築が解決の糸口に

若者の内向き志向の背景には、学校の授業でしか海外に触れていないという「食わず嫌い」があります。英語学習を進めることで海外コンプレックスが解消され、海外勤務を厭わない社員が増えることが期待されます。

中小企業まで含めた日本企業の海外進出が増加する中で、現地法人の開設や駐在を嫌がる社員が多いのは大きな課題です。ただ内向き志向を嘆くのではなく、会社としてできることを少しずつ進めることが求められます。

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