2019.9.16
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採用・育成

最大のROIを生み出す4つのキーワード

(写真=Jirsak/Shutterstock.com)
(写真=Jirsak/Shutterstock.com)
人的資本の重要性に対する意識が高まるにつれ、人材育成を「コスト」ではなく「投資」と見なす考え方が日本企業間でも浸透しつつあります。しかし、「投資するからには高リターンを得たい」というのが、企業の本音ではないでしょうか。さまざまな費用対効果測定に応用可能なROI計算法を活用し、4つのキーワードを押さえることで、HR投資による「Return On Investment(投資収益率)」の最大化が期待できます。

人材育成ROIとは?

投資した資本に対する利益率を指すROI。人材育成の領域では、育成コスト(オンボーディング、スキル・トレーニングなど)が投資資本に値し、人材の成果が利益に値します。重要な経営資本である人的資本を充実させるうえで、人材育成は組織全体の最優先事項です。しかし、人材資本は定量化できる財務データを常に提供できるものではなく、プロジェクトやプログラムからは「目に見える成果が、すぐに得られないことが多い」のも事実ではないでしょうか。

そのため、「本当にプログラムが効果を上げているのか」「どのような効果が期待できるのか」「今の手法で間違っていないのか」など、経営幹部が人材育成への投資に不安や疑問を抱くこともあります。
そこで、人材育成による生産性を数値化し、目に見えるデータとして表す目的で人材育成ROIを測定するという手法が用いられているのです。

人材育成・人的資本ROIの測定法―測定要素を数値化する

一般的なROIの算出には、「利益÷投資資本=ROI」という方程式を用いますが、人材育成による直接的利益や実際のコストの計算は非常に複雑なため、正確なROIの測定は困難だとされています。しかし、おおよその目安を知るだけでも、人材育成の計画・予算作成や長期的な組織改革に役立など、数々のメリットがあります。

シンプルな人材育成ROIの測定法として利用されているのは、「測定要素を数値化する」という手段です。具体的には下記のような必要と思われる要素を数値化し、その数値に基づいてROIを計算します。

・従業員の定着率・離職率・欠勤率
・現在・過去の報酬データ
・トレーニング・オンボーディングコスト
・リクルーティングコスト
・従業員の満足度
・従業員一人当たりの収益
・福利厚生コスト
・募集ポジションが埋まるまでの時間など、

また、研修効果の測定にフィリップスが用いているROIモデルでは、次の5項目に基づいて効果を測定します。

1.Reaction(反応)
2.Learning(学習)
3.Behavior(行動)
4.Results(業績)
5.ROI(費用対効果)

「(研修の結果生じた利益-研修コスト)÷(研修コスト)×100=ROI」という方程式を用いています。人的資本のROIを測定する場合は、組織の純収入(営業費用、給与、手当を差し引いた後の総収入)を給与と手当のコストで割り算出。特定のプログラムのROIを算出するには、まず特定のプログラム自体の価値を計算し、次にそれをプログラムの実装コストで割ります。

例えば、工場ラインの生産を迅速化するためのトレーニング・プログラムによって製品量が増加すると予想される場合は、製品の増加分の価値を計算し、それをトレーニングと資材のコストで割ります。

ROIが低い=プログラムや戦略の見直しが必要

測定した人材育成ROIが予想よりも低い場合、人材育成プログラムやHR戦略が適切ではない可能性が考えられます。「どの部分にどのような改善が必要なのか」について見直す必要性があるでしょう。こうした測定法は、新入社員のオリエンテーション・プログラムや人事情報システム、多様性プログラムなど、さまざまなHR関連のROIや有効性の測定に応用可能です。

ROIを最大化するための4つのキーワード

人材育成は、組織の成長を促すために欠かせない投資ではあるものの、経営課題や戦略にマッチしたものでない限り期待したような成果は得られないでしょう。しかし、成果に最も影響を及ぼす要因は、利益を生み出す人材のモチベーションです。ROIを最大化するためのキーワードを押さえて、最大のリターンを狙いましょう。

1.報酬・認識

近年、「仕事のやり甲斐や興味深さを重視する人材が増えている」というものの、従業員の努力や成果、忠誠心に対する報酬や認識が欠けている企業は、離職率が高い傾向があります。報酬・認識は、「従業員のモチベーションを維持する」という基本的な要素です。

2.従業員エンゲージメント

「従業員エンゲージメントの高さと、ROIの高さは比例する」といっても過言ではないでしょう。AirbnbやGoogleなど急成長を遂げた国際企業は、人材育成に惜しみなく投資し、高利益を生み出しています。

3.継続的な学習の機会

新入社員のオンボーディングから熟練社員のスキル向上まで、幅広い層の従業員が継続的にキャリアを向上できる学習の機会を提供します。学習から得た知識やスキルは、やがて大きな利益となって企業に還元されるでしょう。

4.組織全体の課題の明確化

「組織に貢献するためには、どのような方向を目指せばよいのか」という課題に従業員が取り組むためには、目標設定が必須です。しかし、組織全体の課題が不明瞭だと従業員は目標を定めにくくなります。人材育成は、即座に成果を期待するものではありません。長期的な投資であることを前提に、効果的なROI戦略を立てることで最大のリターンが得られるのではないでしょうか。
 

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