2019.9.13
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人事評価

従業員の能力を最大化するコンピテンシー強化法

(写真=Monkey Business Images/Shutterstock.com)
(写真=Monkey Business Images/Shutterstock.com)
日本の企業では、「従業員の能力=職務遂行能力」と捉える傾向が強く、職務遂行能力を存分に発揮するための能力「コンピテンシー(Competencies)」について語られる機会は少ない傾向にあります。しかし、組織の成長を促すうえで必要となる要素を見極め、中核となるコア・コンピテンシーを強化することで、従業員の能力を最大限に引きだすことが可能なことをご存知でしょうか。

コンピテンシーとは?高い成果を出す人に共通する行動特性

高い成果につなげるための知識やスキル、思考、アプローチ、行動力といった総合的な特性が「コンピテンシー」です。どのような「成果」であれ、その背景には必ず「理由」があります。優れたコンピテンシーをもった人材は、必然的に優れた成果を上げるというわけです。対照的に、業績がふるわない従業員は、コンピテンシーが十分でない、またはコンピテンシー自体がないことが原因で、能力を十分に発揮できていないのかもしれません。

必要となるコンピテンシーは、業種や組織制度などさまざまな要因によって異なります。組織の成長を促すうえで「必要となる特性=キー・コンピテンシー」を特定し、中核となるコア・コンピテンシーの強化は、従業員が能力を最大限に発揮できる機会の創出につながります。

強化すべきコア・コンピテンシーは最小限に

多様な産業で共通して重視されるコア・コンピテンシーは、下記のようなものがあげられます。
  • チームワーク
  • 責任感
  • キャリアへのコミットメントとモチベーション
  • 意思決定力
  • コミュニケーション・スキル
  • リーダーシップ・スキル
  • ビジネスマインド
  • 信頼性と倫理感
  • 問題解決力
  • オーガナイズ力
  • 専門知識・技術
しかし、コア・コンピテンシーを多く設定すればするほど、カバーする範囲が広くなり、プロセスが複雑化することも考慮すべきです。そこで、本当に必要な要素を絞り込み、可能な限りシンプルかつ最大限に効果を上げるためのフレームワークを作成します。このように、コンピテンシーを活かせる環境を準備することが重要です。

コンピテンシーのフレームワーク作成、5つの重要ポイント

コンピテンシー・フレームワークの作成は、従業員の知識やスキル、属性を効果的に評価・監視する良い機会にもなります。コンピテンシーのフレームワークを用いて現在のコンピテンシー・レベルを測定し、ビジネスに付加価値を与えるために必要な専門知識やスキルの特定に役立てるのです。また、後継者を含む人材の採用や育成に関する意思決定にも利用できるでしょう。

1.組織全体ではなく、「個々の役割」に焦点を当てる

個々の役割ごとに、「コンピテンシーのフレームワーク」を作成しましょう。例えば、HRマネージメントには「管理能力」のほか、「トレーニングの機会を積極的に特定するスキル」や「適切な任務を通じ、従業員の成長を促す能力」などの強化が求められます。組織全体のコア・コンピテンシーではなく、あくまで「個々の役割が、業務を効率的に遂行するために強化すべき要素」に焦点を当てることで、必要な要素だけをフレームワークに組み込みやすくなるでしょう。

2.多様性をもたせる

HRやマネージャーが第3者の視点からフレームワークを開発するのではなく、実際に日常的な業務に携わっている従業員の意見に耳を傾けることが重要です。コンピテンシー強化チームを結成する場合、フレームワークを利用する従業員をメンバーに加えるなど多様性をもたせることで、新しい発見が期待できるでしょう。

例えば、第3者が「必要」と感じている要素は、実際の仕事をしている従業員にとっては不要などころか、パフォーマンスを低下させる原因の一つになっているかもしれません。

3.可能な限り多くのデータを収集する

高質なデータ収集も、より適切なフレームワーク作成のキーポイントです。信頼できる情報が多ければ多いほど、コア・コンピテンシーの特定が容易になり、より効果的なフレームワークを作成しやすくなります。従業員のパフォーマンスのモニタリング、従業員へのアンケートや面談、作業の分析など、多様かつ適切な手段を用いて、可能な限り多くのデータを収集しましょう。

4.短期サイクルで臨機応変にアップデートする

同じフレームワークを、長期間使い続ける必要はありません。例えば、コンピテンシー・リストを作成した中から、「今後1年間で、最もビジネスの成功に影響を与えるコア・コンピテンシー」を数個選択する方法も一つです。これは、必要に応じてアップデートするという手法になります。他にも、「フレームワークが効果を発揮しているか」といった本来の目的に基づく評価から、事業環境の変化や方針変更まで、アップデートの基準となる要素はさまざまです。

5.過去に成果を上げたコンピテンシーを真似しない

過去に成果を上げたコンピテンシーが、現在も同じ成果を上げるという保証はありません。また、社員Aを昇進に導いたコンピテンシーを社員Bが真似したとしても、昇進どころか降格を招く結果が待ちうけているかもしれません。コンピテンシーは「成功につながる要因」を見つけだし、その行動特性を活かすための戦略を実践することで、さらに磨かれていくのです。
 

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