2019.9.17
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人事評価

組織の戦力となる人材を見分ける「認知能力テスト」とは?具体的なプロセスを紹介

(写真=pathdoc/Shutterstock.com)
(写真=pathdoc/Shutterstock.com)
認知能力テスト(Cognitive ability Test)は、様々な職業における将来のパフォーマンス(適性)を測定・予測する上で、最も効果的な手段の一つとして多くの企業で採用されています。

「業務を正確かつ効率的に実行する能力や、効果的な意思決定力に優れている」とされる認知能力の高い人材は、適切な育成プロセスを踏むことで、組織の強力な戦力となるでしょう。

米企業の4割以上が採用している理由

IQテストやインテリジェンス・テストなどとも呼ばれる認知能力テストが「一般的な精神能力(GMA)」を測定する方法として開発されたのは、遡ること19世紀終盤。

その後、1904年に心理学者のチャールズ・スピアマン博士が、「パターンの特定など1つのタスクを完了する能力を備えている個人は、算術問題など他のタスクでも優れた能力を発揮する」という事実を発見したのを機に、さらなる発展を遂げました。

長年にわたる研究から、あらゆる役割や産業において、認知能力が職務パフォーマンスに最も影響を与える要因であることが明らかになり、現在様々な業界において一般的な採用ツールとして定着しています。

米国においてはMicrosoftやFord Motor、Pepsico、Deloitteなどの大手を含む企業の43%、FTSE 100企業(ロンドン証券取引所に上場している時価総額上位100銘柄)の70%が、認知評価を含む心理測定テストを採用プロセスで使用しています。

認知能力の高い人材が戦力になる

認知能力テストの目的は、数値能力や言語能力、抽象能力などを測定し、特定の分野における個人の認知機能を測定することです。一般的に認知能力の高い人材は、以下の能力も高いと考えられています。
  • 作業タスクをより正確かつ効率的に実行できる
  • より効果的な意思決定を下すことができる
  • 問題を合理的かつ理論的に解決できる
  • 新たな課題や複雑な問題に適切に対応できる
これは、「人間の認知能力が、仕事に関する情報の取得や整理、保持、適用といった基礎的なタスクに反映する」という概念に基づくものです。したがって、テストのスコアが高い候補者はスコアの低い候補者よりも生産性が高く、トレーニングに要する時間が少ない傾向が見られます。

その結果、育成コストの削減から将来のリーダー候補の育成、ビジネスの活性化まで、雇用主に大きな経済的利益をもたらします。

認知能力を形成する8つの要素

認知能力を見極める上で、重要なポイントは以下の8つ。すべてがタスクを遂行するために必要な要素です。
  1. 持続的注意力
  2. (不必要な物事に対する)応答抑制力
  3. 情報処理の速度
  4. 認知の柔軟性と制御
  5. 複数の物事に対する注意力
  6. ワーキングメモリー(職務的記憶力)
  7. (理論的に物事を整理するための)カテゴリ形成力
  8. パターン認識と帰納的思考

認知能力テストの種類と利点

多くの認知能力テストが開発・採用されていますが、ここでは最も一般的な使用例をご紹介しましょう。複数の種類を組みあわせて出題することで、広範囲な得意・不得意分野を特定することができます。「限られた時間内で、どれほど多くの問題に正確に回答できるか」という点も、評価の対象となります。

数値推論テスト

目的:数値および統計データを理解し、正確に分析および適用する能力を測定する

例:パーセンテージの計算問題、不足しているデータ数値の算出

言語推論テスト

目的:ボキャブラリーや文法力ではなく、書面や報告書の情報を理解し、的確な分析を行う能力
   を測定する

例:テストの問題文に対するコメントについて、「正しい」「正しくない」「どちらとも言えな   い」から一つを選ぶ

図式推論テスト

目的:不完全な情報を処理し、白紙の状態から問題の解決策を概念的、戦略的、分析的に考え
   出す能力を測定する

例:単語や数値データがほとんどない画像などの図を使用しパターンを特定、あるいは図形を
  再配置して新しい図形を作成する

エラーチェック・テスト

目的:情報の詳細に注意を払い、迅速かつ的確な判断能力を測定する

例:A社、B社、C社のデータに基づき、正確な情報を選ぶ3~4択問題

認知能力を活かし、伸ばす育成法

認知能力テストはその有効性が立証されていますが、以下のような注意点も指摘されています。

常に公平な結果が出るとは限らない

誰にでも得意・不得意分野があります。たった1回のテストで、候補者の認知能力を100%測定することはできません。テスト当日の体調や精神状態が、テスト結果に反映される可能性も考えられます。

文化的バイアスが反映されやすい

認知能力テストには、「教育や性別から生じる、文化的バイアスが反映されやすい」との懸念もあります。こうしたバイアスは、組織の多様化を妨げるリスクを秘めています。

これらの注意点を踏まえた上で、組織の戦力となる人材を見極め、潜在的な能力を最大限に伸ばすことが重要です。そのためには、認知能力テストを適性評価の一環としてとらえ、複数の手法を組み合わせて多面的な評価を行うとともに、それぞれの人材の能力や特質に合った、適切な育成プログラムを提供する必要があります。
 

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