組織の成長が鈍化している原因は、成長の原動力となる「人材」かもしれません。「ワークフォース・アナリティック(Workforce Analytic)」は、HR戦略に必要な改善点を特定し、組織の成長促進に役立つ強力な分析法です。
労働力を最大限に高めるワークフォース・アナリティック
人的資源管理は、組織の成長を支える上で極めて重要な要素です。組織の目標達成に向け、各従業員の役割や責任、権限、コンピテンシー(成果につなげるための知識やスキル、思考、アプローチ、行動力など)を考慮し、労働力を最大限に高める必要があります。
効果的な人的資源管理を行うためには、基盤となる情報が不可欠です。その重要な情報を収集し、従業員がどのように労働力に貢献しているかを分析するためのツールが、ワークフォース・アナリティックです。
ワークフォース・アナリティックを活用することで、労働力やスキル、能力の観点から、現在そして将来必要な要素を特定し、すでに生じている、あるいは将来生じると予想されるギャップを発見しやすくなります。このギャップが、組織の成長に必要な改善点というわけです。改善に向け、すべてのギャップを埋めるためのアクションプランを作成しましょう。
近年HR領域でもデジタル化が進み、人材に関するデータや種類が増加傾向にあります。また、データサイエンスや機械学習に裏付けられた、最新の分析ソリューションを活用する企業も増えています。
戦略的に利用するメリット
ワークフォース・アナリティックを戦略的に利用し、貴重な情報をHR部門を含む組織全体で共有することで、以下のような様々なメリットが期待できます。
- 成長に必要な改善点の特定
- 人材の効率的な管理・育成
- HR業務のコスト・時間の節約
- より客観的な意思決定の促進
ワークフォース・アナリティック 3つのステップ
一般的に、ワークフォース・アナリティックは以下の3つの手順で行います。需要と供給の分析結果を照らし合わせ、両者のギャップを特定する方法です。
1. 供給分析
供給分析は、従業員の配属や新規雇用を最適な状態で保持し、HR管理を組織の成長戦略に結びつける
分析の焦点:内部および外部供給・現在の労働人口・労働力の動向
チェックポイント:
- 採用手段とリソース
- 適任と思われる応募者および新規雇用数
- 新規雇用者によるオンボーディングへのフィードバック
- 離職率と離職理由
2. 需要分析
分析の焦点:将来の需要を満たすために必要であり重要な職業と能力・プログラムやサービス(ボリューム、配信チャネル、場所、期間など)に起こり得る変化
チェックポイント:
- 各職務の重要度
- 統合可能な職務(実行するために必要な従業員数、知識、スキル、能力)
- 将来の変化に対応するためのスキルと能力
- 効率化可能なプロセス
- 組織の戦略目標
- 組織再編成の必要性
3. ギャップ分析
分析の焦点:需要と供給の分析を比較し、必要な従業員数、職種および将来における能力のの不足と過剰を判断する
チェックポイント:
- 従業員のスキル向上の機会
- 従業員の定着率を高める職場環境の提供
- 必要な人材の特定(例:IT領域に強い従業員の雇用)
- 多様性を維持あるいは向上させるための、積極的な行動戦略
労働力のモデル化
ワークフォース・アナリティックによって改善点を明確にするだけでは、組織の成長は期待できません。アクションプランとして、最適な労働力のモデル化(Workforce Modelling)が必要です。
一般的なHRアナリティックが現在の組織の位置を確認するツールであるのに対し、労働力のモデル化は組織を未来に導く方法を示すためのツールとして活用されています。
HRアナリティックでは、半年後、1年後、5年後といった未来の組織の立ち位置を予想することは困難ですが、労働力のモデル化を組み合わせることで、将来の人材需要に関する洞察力が高まります。ワークフォース・アナリティックで特定した現在と未来の需要のギャップを、モデル化戦略の基盤とし、改善策を視覚化するのも一案です。
他のアナリティクスやHR指標との併用で相乗効果を狙う
ワークフォース・アナリティックを、他のアナリティクスや指標と併用することもできます。
例えば、社員や組織に関するデータを科学的かつ効率的に収集・分析する「ピープル・アナリティクス」と組み合わせ、相乗効果を狙う戦略が考えられます。人材だけではなく、組織としてのパフォーマンスを測定・分析することで、より強力な成長促進が期待できます。
また、HR戦略の価値や効果を示す指標である「HRメトリクス(人材・人財指標)」とも、頻繁に併用されています。
HR領域により戦略的な役割が求められている近年、可能な限り多くの価値ある情報を効果的に分析し、適切な意思決定やHRプラニングに役立てましょう。定期的に分析を行い、新たな傾向と要因を早期に発見し対処することも重要です。
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