2019.9.23
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国別トレンド

日本企業の次の海外進出はポーランド? 「東欧のビジネス・ゲートウェイ」と呼ばれる理由

(写真=PHOTOCREO Michal Bednarek/Shutterstock.com)
(写真=PHOTOCREO Michal Bednarek/Shutterstock.com)
近年、アジア、中米、アフリカに次ぎ、東欧地域に進出する日系企業が増えています。特に、ポーランドは「東欧のビジネス・ゲートウェイ」として、世界中の企業から注目を集めています。

「欧州一の親日国」といわれるポーランドに日系企業が進出する、あるいはポーランドで日本人が起業する利点などと共に、その魅力的なビジネス環境についてご紹介しましょう。

堅硬な成長を続ける「中東欧一の経済大国」

バルト海に面するポーランドは、日本の約5分の4の国土に人口約3,840万人(ポーランド中央統計局2019年2月データ)が暮らす、中東欧一の経済大国です。

1989年の体制転換期後や2009年の世界金融危機後には、深刻な不況や一時的な景気低迷が見られたものの、EU諸国の中で唯一、27年間一度もマイナス成長に陥ることなく継続的に成長を続けています。2004年のEU加盟を機に貿易や投資で経済を拡大する一方、食品の他、自動車や金属、電機電子機器、ゴム・プラスチックなどを主要産業に発展させました。

2018年の一人当たりのGDPは世界59位の約15,430ドルと、日本の半分にもおよびませんが、総体的なGDPは世界22位の約5,860億ドル、経済成長率は5.1%(IMFデータ)と、堅硬な経済基盤を着実に築いています。

新制度で投資やビジネス環境の改善を狙う

一方、国際連合貿易開発会議(UNCTAD)の「2018年版世界投資報告書」によると、同国への直接投資(FDI)は2015年をピークに下降基調にあり、2017年には前年比45%減の64億ドルに縮小しました。

そこで、国内外からの投資促進強化を目的に新たな制度を設けるなど、国際的なビジネス環境の整備を強化しています。

2018年は、起業環境や中小企業のビジネス環境、広範囲にわたる経済活動の大幅な改善を促す「ビジネス憲法」を実施しています。加えて、「新規投資援助法」を介し旧制度による区域制限を廃止することで、投資可能な範囲を拡大しています。

新制度では、起業後半年間は社会保障の支払いが免除されるほか、条件を満たしている地域を特別経済区(PIZ)に指定できるため、これまで投資対象として弱かった地域にも資本流入の機会を創出できるようになりました。

「日本との友好関係」がビジネスでもプラス効果に?

地理的、そして文化的にとても離れた国であるにも関わらず、ポーランドと日本は100年に渡る友好関係を築いています。

ロシア革命中、シベリアに強制的に送られた800人以上のポーランド人の孤児を、ウラジオストックのポーランド救済委員会と日本赤十字社、日本政府が協力し合って救済した歴史は、現在もポーランドで語り継がれています。

近年においては1989~2008年まで、ポーランドの民主主義への移行および市場経済活性化の支援として、技術協力や諸政策の立案、企業育成、環境保全など、広範囲にわたる領域で、経済協力を提供してきました。

また、国立4大学には約600人の日本専攻学生が在籍しているほか、およそ60の学校や機関で合計約4,500人が日本語を学習しています(外務省データ)。日本語を話せる現地の人材を、比較的容易に雇用するチャンスにつながるかも知れません。

日系企業の進出条件

こうした複数の利点を活かし、ポーランドに進出する日系企業が増加傾向にあります。2017年の時点で進出を果たしている日系企業数は、前年比5.6%増の303社(外務省データ)。

これらの企業の多くが、有限会社や株式会社、支店、駐在員事務所という形態で進出しています。有限会社は資本金5,000ズロチ以上、1株当たりの最低額面価格は50ズロチ、株式会社は資本金10万ズロチ以上、1株当たり最低額面価格は100分の1ズロチが設立条件です(ジェトロ調査)。

日本人が現地で就労する場合は、労働ビザの取得が必須です。ポーランドは単体の起業ビザを発行しておらず、企業経営者や役員、駐在員など、役職ごとにタイプが異なる労働ビザを申請する必要があります。

日立、味の素など、大手が多数進出

日立キャピタルは2014年、完全子会社である日立キャピタル・ポーランドをワルシャワに設立。オランダに次ぐ第2の欧州拠点とし、戦略的な自動車リース事業を展開しています。2019年1月には、ポーランドで約 36,000 台の車両管理台数を有する自動車リース企業プライム・カー・マネージメント(PCM)の完全子会社化を目的に、株式公開買い付け(TOB)を実施しました。これにより、同国最大手規模の企業のポジションを確立しました。

味の素(冷凍食品株式会社)は欧米市場における開発・生産体制の強化を目指し、2014年、ポーランド南部の都市チェンストホバを拠点とする冷凍食品製造メーカー、ヤボ(Jawo)と、合併企業味の素ヤボを設立。翌年には、チェンストコバに新工場を稼働させるなど、精力的に事業を展開しています。

その他、三菱やホンダ、富士通、ニチレイ、三菱東京UFJ銀行、日本たばこ産業、ぺんてる、日本通運、伊藤忠商事、Panasonic、東芝、ヤマハ、資生堂など、多数の日本大手が、ポーランドへの進出を果たしています。

戦略的地位、人口の多さ、EU加盟国、安定した経済、熟練労働者の人件費の安さ、企業にとって魅力的な税制など、ポーランドは企業を魅了する利点を沢山備えています。新たなビジネス制度に後押しされ、国外企業の進出が増えると予想されます。
 

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