2018.12.26
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人事評価

グローバル企業に起こりがちな紛争のパターンと解決の方向性

(写真=create jobs 51/Shutterstock.com)
(写真=create jobs 51/Shutterstock.com)
今日では、企業が利益追求を理由に犯してはならないという行動原則が、グローバルでも共通認識されつつあります。そのためコンプライアンス違反をした場合には市場から排除される可能性もあります。グローバル企業は、これから起こりうる紛争パターンと、その解決の方向性を理解しておく必要があるのです。

従業員による不満、苦情の種類と予防策

紛争に発展するような従業員による不満や苦情は多種多様ですが、トラブルが起こりがちなのは「業務遂行上の不満」「人事評価制度上の不満」「パワハラ・セクハラ」の3つがあげられます。また、従業員による不満や苦情が紛争になる前に、企業内で自主的に解決を図るためには、不満や苦情の発生の予防が必要です。

●業務遂行上の不満

業務遂行上の不満は、日常業務の運営に関することや、人間関係に関することなど、従業員による不満、苦情の中でもっとも割合が高い項目のひとつとなっています。

●業務遂行上の不満に対しての予防策

業務遂行上の不満に対しての予防としては、労働時間や人員体制の不満に対して、過密な働き方を見直していくことが重要です。相談窓口として大きな役割を担っている上司に対しては、研修を強化して、従業員に対しての指導方法や、業務調整能力を向上させることが必要です。職場内でのコミュニケーションを活発化させることも予防になるでしょう。

●人事評価制度上の不満

人事評価制度上の不満とは、人員配置、出向、昇進・昇格、勤務延長、再雇用に関すること、賃金、労働時間などの労働条件に関することなどがあげられます。

●人事評価制度上の不満に対しての予防策

人事評価制度上の不満に対しての予防は、人事評価制度の明確化、評価者の資質向上とトレーニング、評価結果のフィードバックなどによって公平な人事制度を作っていくことです。評価結果のフィードバックの場面では、従業員とコミュニケーションをとり、不満や苦情の段階で解決を図り、紛争に発展しないようにすることも重要です。

●パワハラ・セクハラの不満

パワハラ・セクハラは、従業員の不満、苦情の中でも近年高い割合を占めています。パワハラは人間関係に関すること、セクハラは男女差別なども含まれ、ともにセンシティブな問題になります。

●パワハラ・セクハラの不満に対しての予防策

ハラスメントの背景には、職場のコミュニケーションのあり方が大きく関わってきます。個人を尊重することをベースに置きながら、職場のメンバーの相互信頼関係の強化を図る努力がハラスメント問題の不満に対しての予防として必要になります。

企業内における不満や苦情の解決を図る経路

従業員による不満や苦情は、紛争になる前に企業内で自主的に解決を図ることがベストです。企業内における従業員による不満や苦情の解決を図る経路は、上司、人事部門、労働組合があげられます。

●上司に対しての相談

業務遂行上の不満の解決を図る経路として、紛争を防ぐ役割が大きいのが上司に対しての相談です。上司は従業員にとって、もっとも近い相談相手であり、業務遂行上の不満において従業員の事情や考え方を理解しているという考えの下、従業員は現実的な解決を望んで相談します。

上司に対しての相談は、従業員による不満や苦情が生じた、早い段階での対応ができるため、事態を悪くしたり、新たな問題に発展させることを防ぐ機能も果たします。

●人事部門に対しての相談

人事部門に対しての不満や苦情の相談は、人事評価制度上の不満が中心になり、フォーマルな相談として取り扱われます。そのため企業としては、具体的な取り組みや確実な対応をしなければなりません。従業員にとっては問題が表面化して、人事評価などに影響が出てしまうのではないかなどの懸念が発生してしまう可能性があります。

そのため従業員の不満や苦情を企業内で自主的に解決するためには、人事部門としては従業員が相談を躊躇することがないように受付体制を整備しておくことが重要です。

●労働組合に対しての相談

労働組合は相談窓口の設置や、労働組合の職場懇親会などを実施して、従業員の不満や苦情を把握していく重要な役割を担っています。また、従業員に対して職場アンケートなどを実施して、職場において上司が相談先として機能しているのか、人事部門が相談窓口として有効かを確認することも重要です。

従業員の不満や苦情を紛争に発展させないための課題

グローバル企業に起こりがちな従業員の不満や苦情を紛争に発展させないためには、企業内における不満や苦情の解決を図る経路である、職場の上司、人事部門、労働組合が共同で、問題解決に取り組む体制を構築しておくことが重要なのです。

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