GE(ゼネラル・エレクトリック)やアドビシステムズなど多くのグローバル企業が「パフォーマンス・マネジメント」を採用しています。このマネジメント手法は、社員一人ひとりに対して、モチベーションや問題意識、成長度、キャリア意識や成果についてマネジメントを行うというものです。
従来型のマネジメント手法とはどのようなものか
従来型のマネジメント手法は管理される側は管理する側の指示命令に従うことで成立していました。マネジメントの大まかな流れは以下の通りです。
1. 上司と部下が期初に面談し、個人の数値目標を設定
2. 期中に上司が部下に進捗度を踏まえたフィードバックとアドバイスを行う
3. 期末には上司が部下の達成度に応じて評価
4. 期末の面談で評価の結果を伝え指導とアドバイスを行う
従来型の手法だけでは対応できなくなった2つの理由
管理する側は目標の設定、フィードバック、アドバイス、評価に専念し、管理される側は与えられた目標を達成するために自分で計画を立てて行動します。しかし、こうしたマネジメントだけでは不十分な時代になりつつあるのです。その理由は大きく2つあります。
まず「評価が一人歩きしたため、組織のパフォーマンス低下が起きた」ことがあります。評価部分だけが運用され、結果として評価と給与を連動させる仕組みができあがります(レイティング)。これは給与という外発的な要素によって動機づけを行う手法ですが、近年この手法が社員のモチベーションやパフォーマンスを下げることがわかったのです。
もうひとつは、「レビューの頻度が低いため、グローバル時代に求められる柔軟性とスピードが不足しがち」な点があります。従来型の手法では適宜フィードバックやアドバイスは与えるものの、年に1回のレビューしか行われない場合もあります。そのため柔軟性やスピードが不足するケースが増えたのです。
柔軟性とスピードを兼ね備えたパフォーマンス・マネジメント
MBO(Management by Objectives)など従来型のマネジメント手法は、人事評価制度として運用する分には一定の効果があります。しかし不景気で昨対比未達成という状況が続いたり、変化の激しいビジネス環境下ではMBOだけでは効果が限定的になり、人材マネジメント全般をカバーするのが難しくなってきているのです。
そこで注目されているのがパフォーマンス・マネジメントです。パフォーマンス・マネジメントを導入するとき、「目標設定」「コーチング」「フィードバック」という3つのキーワードを意識するのがよいでしょう。
● 目標設定
MBOなどと同様、パフォーマンス・マネジメントでも目標設定を最初に行います。社訓や経営理念などに示された組織の目標に対して、個人やチームが達成するべき目標や取るべき行動は何かを考え、そこから上司と部下がマンツーマンで目標と成果の基準を決めます。これは従来型の手法と大きな違いはありません。
● コーチング
パフォーマンス・マネジメントではコーチングの技法を積極的に活用し、上司が部下に伴走します。レビューの頻度が高く、四半期ごとのフィードバックだけではなく、毎月、毎週行う場合もあります。そのため、その時々の状況に合わせたフィードバックや指導の調整を可能にし、めまぐるしく変わるグローバル市場に対応できる柔軟性へとつながります。
● フィードバッグ
フィードバックは従来型の手法とは内容が大きく異なります。評価ばかりが一人歩きしてしまったMBOなどに対し、パフォーマンス・マネジメントでは、あくまで数値やデータのエビデンス(客観的証拠)に基づいたフィードバックを行います。そのため問題点と解決策が明確化しやすくなったのです。
パフォーマンス・マネジメント導入における課題とは
パフォーマンス・マネジメントの導入は一朝一夕には成し遂げられません。MBOなどの従来型の手法では評価者の役割を担っていた上司が、部下のパフォーマンスをマンツーマンでマネジメントするコーチになる必要があるからです。それまでずっと評価者だった上司にいきなりコーチの役割を与えても難しいでしょう。
そのため管理する側の人間には、コーチングの知識や経験を身につけてもらうことが重要です。
グローバル時代に求められるマネジメント手法
今後はパフォーマンス・マネジメントのような市場の変化に即対応できるマネジメント手法が求められます。管理する側の人間の教育などを考えると、新しいマネジメント手法を組織に浸透させるためにはできるだけ早く行動を起こす必要があるでしょう。時間は待ってくれません。企業と人材の成長のためにどうすればよいのか検討してみてはいかがでしょうか。
【オススメ記事】
・グローバルタレントマネジメントが求められる理由にせまる
・アジアの現地企業の人材流出を防ぐためにすべき4つの対策
・日本型「同一労働・同一賃金」のスタンダードな位置づけは?
・アジアでの法人駐在員がマネジメントで失敗する3つの理由
・アジアに進出する日本企業が直面する人事における3つの課題とは?