2019.3.21
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人事評価

労使紛争を避けるために日系企業が気を付けるべきジェンダーギャップ

(写真=nep0/Shutterstock.com)
(写真=nep0/Shutterstock.com)
世界中の多くの国において、労使紛争の原因になりがちな要因の一つにジェンダーギャップがあります。日本はジェンダーギャップについての意識が遅れているため、日系企業が海外に進出した場合、思わぬことで紛争に発展する可能性があるので注意が必要です。

労使紛争のリスクを下げるために、日系企業が気を付けるべきポイントをご紹介いたします。

労使紛争の原因になるジェンダーギャップ

労使間における紛争原因の一つにジェンダーギャップ(男女格差)があります。世界的に社会進出における男女格差をなくす動きがあり、労働環境においても各国がさまざまな労働政策を行って男女間の格差是正に取り組んでいます。そのため、スタッフの雇用や賃金の処遇、昇進などで、性別による差別と捉えられる状況があった場合、不当な扱いを受けたと考える労働者と企業の間で労使紛争に発展する可能性があります。

日本はジェンダーギャップ後進国

ジェンダーギャップについては、世界経済フォーラムが各国のジェンダーギャップ指数(GGI)を「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書」で毎年公表しています。

2018年の報告書によると、日本は149ヵ国中110位で主要7ヵ国(G7)の中では最下位となっています。アジアで限定しても、フィリピンが8位とダントツであり、日本と同じく儒教による伝統的な性別による役割や分業の考え方がある中国も103位と日本よりも上位にいます。

日本は世界的に見た場合、ジェンダーギャップ後進国と言え、今の国内の感覚を持ったままでは海外拠点においてジェンダーギャップを原因とする紛争が多発する可能性があり得ます。

国によって違う男女差別に関する法規制

国や地域によって文化や事情が異なるように、法規制も異なります。先ほどの報告書で1位だったアイスランドでは、企業役員の40%を女性にするクオータ法などがあります。2018年には、世界で初めて同じ仕事をする男女従業員の賃金が平等である証明を雇用主に義務付ける法律が施行されました。もし雇用主が平等な賃金を証明できない場合には罰金が科せられます。

また、8位のフィリピンでは、各省庁および自治体や国立大学などの機関で、予算の5%をジェンダーに関するプログラムやプロジェクトに充てることが法律で定められています。

一方で、67位のシンガポールでは、憲法において宗教や人種、出生地による差別に関しては禁止事項があるにも関わらず、性差別の禁止事項はありません。女性憲章のような法律は存在しますが、特に女性参画を推し進めるための体制が整っているわけでもありません。それにもかかわらず、シンガポールは女性の社会進出がアジアでトップレベルです。

その理由は、シンガポールは外国人労働者に依存している背景があり、国内の労働力不足を解消するために女性が労働に参画できるような政策に力を注いできたことなどが挙げられます。また、近年ではワークライフバランスと育児支援にも注力した結果、女性の社会進出が進みました。さらに、シンガポールはメリトクラシー(能力主義)でもあったため、アジア圏の中では男女格差が少ない社会になっています。

このように、法規制や社会風土などは各国ごとに異なります。グローバル企業は、海外拠点の法規制を順守するだけでなく、その背景や現段階の課題についても把握することが望ましいでしょう。

ジェンダーギャップのない人事評価

ジェンダーギャプは宗教や今までの歴史、慣習などが絡むため、法律だけで容易に解決できるものではありません。改善していくためには、ジェンダーギャップにおける意識改革が行えるような教育に力を注ぐことが大切です。

先述の通り、フィリピンでは政策としてジェンダーに関するプログラムなどに力を入れているため、国全体でジェンダーギャップが少ないという特徴があります。労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2018」によると、同国の企業では女性管理職がおよそ半数を占めており、欧米や他のアジア諸国よりも高い割合となっています。

どこの国に進出しようと、企業内でのジェンダー意識の改革は必要であり、継続的に行うことが重要です。それでも、従来の人事評価では評価者の主観などによって評価が異なるなどの課題があるため、今後は誰にとっても公平で納得感のある人事評価をいち早く進めるために、AI(人工知能)を取り入れた人事評価制度を導入することなども有効です。

紛争リスクを下げるためには日本国内での意識改革から

企業の世界進出が珍しくなくなってきた昨今、日本にある本社mがジェンダーギャップに対して遅れた意識のままでは、企業グループ全体にマイナスの影響を与えてしまいます。海外拠点だけでなく、本社側もグローバル視点で意識を改革していくことが、世界各国におけるジェンダーに関する紛争リスクを下げることにつながります。
 

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