2019.3.25
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人材マネジメント

AIによって変わるグローバル企業の人事・組織マネジメント

(写真=ImageFlow/Shutterstock.com)
(写真=ImageFlow/Shutterstock.com)
グローバル企業を中心に、業務にAI(人工知能)を取り入れる企業が増えてきています。AIの導入によって人間の労働の代替や効率化が進めば、自ずと組織も変化することが考えられます。今回は、AI活用による人事・組織マネジメントについてご紹介します。

AIによって人間が担う仕事が代替される可能性

海外ではドイツの産業政策として「インダストリー 4.0」が、米国では企業連合が取り組む「インダストリアル・インターネット」、日本では「第4次産業革命」と呼ばれる産業政策など、各国によって内容に違いはあるものの、AI、ビッグデータ、IoT(モノのインターネット)などによる技術革新によって、産業構造の変革が進められています。

野村総合研究所と英オックスフォード大学の共同研究によれば、日本の601種類の職業を対象にAIやロボットで代替される確率を試算したところ、10~20年後に労働人口の約49%が就いている職業がそうしたテクノロジーに代替される可能性があるという結果が発表されました。テクノロジーの進化のスピードを考えると、近い未来には人間が担ってきた多くの作業がAIによって代替されるようになることは想像に難くないでしょう。

HR領域で広がるAIの導入

すでにHR領域でもAIの導入が広がりつつあります。典型的な例としてチャットボットがあります。人材募集段階で休日や福利厚生、募集職種や企業文化など、応募者からの基本的な質問をチャットボットで回答することで、人事担当者は定番の質疑応答や個別の対応から解放されます。多言語に対応しているものもあり、グローバルにおける採用業務の効率化を図ることができます。

また、AIを人事システムに組み込んで、入力業務や分析業務などルーティンワークを学習させることで自動化するものや、コンピテンシーをAIに学習させ、バイアスのない人事評価や人材発掘を可能にするものなど、AIを取り入れた人事システムを有効活用している企業もあります。

AIによって変わるグローバル企業の人材マネジメント

業務でAIを活用するには、いくつかのパターンが考えられます。

① 労働力代替型
定型的・反復的な業務をAIが行うものです。定型業務のみを行うのであれば、判断基準が明確であるため職務をAIに代替しやすく、効果も得られやすいとされています。
② 労働時間短縮型
職務の中で、定型業務部分をAIで行い、余裕が出た時間で非定的業務あるいは創造的な業務を行うものです。
③ 革新型
同じ定型業務でも、例えば入社志望動書の分析をAIが行い、担当者ごとの評価が異なる問題を解決するなど、今までの成果だけでなく、革新的な要素を加えたものです。

例えば、AIの活用が「労働力代替型」の場合、現在ほどの人員を抱える必要がなくなり、少数精鋭の体制になります。「労働時間短縮型」であれば、人員の数に大きな変化は少ないものの、人間が行う非定型業務や創造的な業務を行うには、企業の戦略として強化したい方向などを明確にして業務内容を決めていく必要があります。

「革新型」は労働時間の短縮だけでなく、客観的で公平な評価やビッグデータ分析など、今までできなかったことが可能になる一方、ビッグデータ分析やAI関連の高い知識やスキルを持ったAI人材が必要となります。そのための体制や学習などが必要となってくるなど、AIの活用の仕方によって人材・組織マネジメントも変わってきます。

また、AIの活用方法がどのようなものであれ、より優秀な人材を獲得しなければならず、現地の大学やコーディネーターなどのパイプ作りや、他企業との差別化、ローカルスタッフとのコミュニケーションや離職防止のための工夫などがより一層求められるでしょう。

シンギュラリティまでのAI

AIが人類の知能を超えるシンギュラリティ(特異点)は2045年に到来すると言われています。AIがシンギュラリティまで到達した未来は人間にとって豊かなものであるか、悲劇をもたらしているかは賛否両論ありますが、テクノロジーの進化を止められない以上、人間の幸福のためにAIを活用していくしかありません。

各国、各企業の進化のスピードが増して競争が激化する中、グローバル企業にとってAIの活用は今後の生き残りの大きなカギとなるでしょう。
 

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