2019.6.1
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人材マネジメント

「オンボーディング」で高める人材定着率と即戦力

(画像=Jirsak/Shutterstock.com)
(画像=Jirsak/Shutterstock.com)
最近「オンボーディング(Onboarding)」という言葉を、ビジネスシーンで耳にする機会が増えたのではないでしょうか。

オンボーディングが既存の研修プログラムと大きく異なる点は、「持続可能な戦力化と組織力を高めるための新たな人材育成・定着」に重点を置いているところです。

HR分野で「オンボーディング」が注目されている背景

「組織の社会化」としても知られるオンボーディングは、HR分野においては「新入社員が新しい企業文化や業務に、感情的・肉体的・職業的にエンゲージするプロセス」を意味します。そのため、新入社員の研修・教育プログラムそのものを、オンボーディングと称する組織も増えています。

オンボーディングを「入社から可能な限り、短時間で成果を出すためのツール」という捉え方もあるようですが、本来は時間をかけて組織の成長に貢献する人材を育成し、生産性を高めるための「初期投資」です。

米ミネソタ州のオンボーディングアプリ企業、クリック・ボーディングの調査では、32%のエクゼクティブが自社のオンボーディングについて「効果を感じられない」と回答しました。この結果は、オンボーディングに対する誤った認識が、原因のひとつではないかと思われます。

「オンボーディング」戦略のメリット

同社の調査からは、ボーディングの導入による効果が立証されています。
  • 従業員の定着率が25%、パフォーマンスが11%向上した
  • 体系的なオンボーディングプログラムに参加している従業員が3年以上組織にとどまる確率は、参加していない従業員に比べ69%高い
  • 15%の従業員が「効果的なオンボーディング・プログラムがないこと」を、転職の動機として挙げた

効果的なオンボーディング・プロセス

入社前からオンボーディングを開始する

正式な入社日以前に、仕事や組織に関する情報をまとめたハンドブックやオンラインルーツを提供するなど、従業員が組織に加わる準備環境を整えます。

結果を急がない

同社の調査からは、新入社員が終身在職権のある社員と同じレベルで仕事をこなせるようになるまで、およそ8~12ヵ月の期間が必要であることも明らかになっています。つまりたった数日間、あるいは数週間の研修期間で、オンボーディングの効果を期待するのは現実的ではありません。新入社員の初年度はスキルアップ向上のサポートに専念することが重要です。

オンライン・ツールの提供

従業員が必要に応じて、キャリアに関する知識を深めることができるオンライン・ツールを提供しましょう。従業員が自主的に学習するためにツールにアクセスし、自らの目的意識を高めていくきっかけになります。

オリエンテーションの開催

クリック・ボーディングの調査結果では、76%の新入社員が新しい環境に馴染む上で、「社交性が最も重要」だと感じています。
業務だけではなく、企業文化や組織構造を早く理解し、能力を最大限に発揮できる環境を整えるためには、オリエンテーションの開催がカギをにぎっているといっても過言ではないでしょう。

しかし、形だけのオリエンテーションを開催してもあまり効果は期待できません。オリエンテーションは、新入社員に組織の方針や今後のキャリアの展望などについて明確に説明する機会であると同時に、彼らが上層部や先輩社員、同期の社員と交流を深める場でもあります。皆が充実感を得られる有意義なものにしていく意識が必要でしょう。

チームへのイントロダクション

次のステップは、新入社員が所属する部署やチームに、可能な限り早く馴染むためのサポートです。チームへのイントロダクションは、新入社員に「チームの新しい一員」としての意識を促す役目を果たします。

ここでは業務への取り組み方から役割など「チームへの貢献」をテーマに新入社員のモチベーションアップを上げ、演習を交えて細やかな指導を行います。

フォローアップ

オンボーディングの効果を最大限に上げる目的で、フォローアップにもしっかりと力を入れましょう。

入社から1~2カ月後に、以下のような従業員エクスペリエンスに関するアンケートを行うと、新入社員の満足度・不満足度の特定に役立ちます。
  • 仕事と組織のどのような点が好きか
  • 入社~現時点までの間で最も印象に残った体験はなにか
  • 仕事のペースが早い・遅い・丁度よいと感じているか
このようなアンケートによって、潜在的な能力や問題を認識することで、一人ひとりの新入社員に適切な指導やコーチングを提供しやすくなります。

効果的なオンボーディングの導入は、人材の定着率と即戦力を高め、最終的な目標である生産性の向上という結果をもたらすでしょう。

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