2019.6.6
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人材マネジメント

急成長のカギは「従業員エンゲージメント」

(写真=fizkes/Shutterstock.com)
(写真=fizkes/Shutterstock.com)
民泊仲介プラットフォームを提供するAirbnb(エアビーアンドビー)の、年内上場が有力視されています。従業員のエンゲージメントに重点を置いた、ライバルとの差別化を図るコアバリューや戦略チームなど、異例の急成長の基盤は、ユニークな企業文化が築いたものといっても過言ではないでしょう。

トラベル産業の歴史を塗り替えた「デカコーン」

2008年にサンフランシスコで設立されて以来、世界191カ国・地域で合計600万件のリスティングと5億人を超えるゲスト数を誇る、世界最大級の宿泊先予約サイトに急成長を遂げたAirbnb。「民泊」という言葉を生みだすなど、トラベル産業の歴史を大きく塗り替えました。

世界に20社しかない「デカコーン(時価総額100億ドル以上の企業)」のひとつで、年内上場計画が報じられています。

「企業文化とは、情熱をもってなにかをするための共有方法」

Airbnbの強みである独自の文化は、同社の共同創設者兼CEO、ブライアン・チェスキー氏 の、「企業文化が堅硬であるほど、企業プロセスが容易になる」 という信念に基づくものです。

同氏は企業文化を「情熱をもってなにかをするための共有方法」ととらえており、「永遠に受け継がれるもの」として、全従業員が理解・尊重すべき自律的な目標と定めています。

強硬な企業文化が構築された組織は安定感があり、従業員と企業間が信頼関係を強化しやすい環境にあります。また、マネージメントが注意深く、従業員のパフォーマンスを見守ることで組織の戦力となり得る優良な従業員を早期に見抜くなど、流出対策に余念がありません。

Airbnb文化を支える4のコアバリュー

Airbnbのコアバリューは、「誰もが完璧な旅をすることができる」という、自社が提供しているサービスの特徴に基づくものです。

多くの企業が「誠実さ」や「率直さ」を自社のコアバリューとしていますが、チェスキー氏はそうした要素は「だれもが人間として持つべき価値」とし、自社のコアバリューにユニークな要素を挙げています。

1.ミッション(使命)を勝ち取れ

Airbnbのミッションは、「誰でも、どこにでも属することができる世界を創造すること」です。ミッション遂行の戦力となる人材の質に関して、Chesky氏が妥協することはありません。同社が雇用した最初の300人の従業員の面接を、一人ひとり自ら行ったというほどの情熱を注いでいます。

2.ホスト(主催者)になれ

Chesky氏にとって、「ホストになる」ことは、「人をもてなしたい、役に立ちたい」というサービス精神が旺盛であることを意味します。

従業員がお互いの「ホスト」となって思いやり、励まし、心を開き合える職場環境作りを、組織の中核としています。

3.冒険を受け入れろ

Airbnbの原動力は、好奇心、楽観主義、そして「すべての人が成長できる」という信念です。

子どものように新しいことにも興味をもって挑戦し、自らの失敗から学び、職場に楽観的なムードをもたらす人材こそが、同社の未来を創ると確信しています。

4.シリアル・アントレプレナー(連続起業家)になれ

繰り返し新たな事業を立ち上げるシリアル・アントレプレナーのように、「大胆な野心を現実のものに変える」ことを固く決意し、創造的なアプローチを用いる精神をもつよう、従業員に提案しています。

従業員エクスペリエンスの向上を任務とする「グランド・コントロール」

こうしたユニークなコアバリューに加え、聞き手と話し手が相互に会話を行う「ツー・ウェイ・コミュニケーション」というたゆまない信念を貫いています。「組織全体で誠実でオープンなツー・ウェイ・コミュニケーションを行う」ことで共有感を高め、従業員エンゲージメントの向上を図る意図があります。

Airbnbは 強化の一環として、様々な組織内イベントやミーティングを開催しています。
「Airfam」と呼ばれる隔週イベントもそのひとつで、ライブストリームで世界中の従業員が参加できるというグローバルなもの。また、各国・地域ごとに非公式なミーティングが慣例化しているほか、エクゼクティブは毎週ミーティングを行い、重要事項をまとめたノートが24時間以内に全従業員に配布されます。従業員同士が交流を深められるインフラネットワークも構築しています。

こうした数々の試みを支えているのは、同社の従業員エクスペリエンス部門の国際責任者、マーク・レヴィー氏が「秘密のソース」と称するグループ、「グランド・コントロール(地上管制)」の存在です。
グランド・コントロールはAirbnb文化の活気づけを目的とした専属チームで、従業員エクスペリエンスの向上を図る努力を日々行っています。職場環境から社内コミュニケーション、従業員の表彰、祝い事、イベントのマネージメントを任務としています。

Airbnbの型破りなアプローチは、「すべての企業や組織に向いている」とはいえないかも知れません。しかし同社のユニークな企業文化が市場や従業員が求めているものと絶妙に適合し、新たなビジネスモデルを作り上げているのです。
 

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