2019.3.29
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Netflix、ライバルに差をつける「最強の人事戦略」のカギとは?

(写真=stockfour/Shutterstock.com)
(写真=stockfour/Shutterstock.com)
DVDの郵送レンタルサービスから、20年余りで世界1.4億人が利用する世界最大の映像ストリーミングサービス企業へ急成長を遂げたNetflix。同社の急成長の源は、トップクラスの人材と企業文化へのアプローチ、さらに継続的な成長を促進する独自の人事戦略です。

なぜNetflixは成長し続けられるのか?

1998~2012年にかけてNetflixで最高人事責任者を務めたパティ・マッコード氏が著書『NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く』で明かしたNetflixの型破りな人事戦略は、既存の人事制度や企業文化を根本から覆す衝撃的な内容でした。

目まぐるしく変化する現代社会でトップ企業の座を維持するためには、多くの企業で成長とともに人材管理あるいは経営体制が複雑化する傾向がみられるのに対し、Netflixは成長とともに「ハイパフォーマンス(高業績)」に焦点を絞り、組織のルールを簡潔化しています。

Netflixでは「ハイパフォーマンス」を含め7つの価値観を企業文化の基盤として、実質主義に徹した企業バリューを掲げています。

1.価値とは我々が重視するもの
2.ハイパフォーマンス
3.自由と責任
4.管理するのではなく互いに理解し合う
5.高アライメント、疎結合
6.業界トップレベルの給与
7.昇進・開発

人事評価9つの基準が組織にもたらすメリット

「価値とは我々が重視するもの」という概念のもと、人事評価の基準でもある本物の価値を「判断力」「コミュニケーション」「影響力」「好奇心」「イノベーション」「勇気」「情熱」「誠実」「無私無欲」と定義しています。

具体的なスキルや行動力を備えた人材は同社の理念の一つである「ハイパフォーマンス」 に貢献する貴重な人材です。Netflix流の理念では、こうした人材の密度を迅速に高めることができるか否かが、継続的な成長のカギを握っています。

優れた人材をすべてのポストに配置することで、予想以上の成果のみならず、ビジネスが複雑化する要因を抑制する効果も期待できます。これらのハイパフォーマーには業界トップレベルの給与や昇進、さらなる能力・スキル開発の機会を惜しみなく提供して確保に努める一方、業務に適さない人材をつなぎ留めず、組織から排除していきます。

組織を成長させる上でベストな人材のみを確保することで、上場後も従業員が自由に働ける環境を拡大し、長期的な成果につなげることができるのです。

従業員が自らの働き方を選ぶ「自由と責任」

Netflixは、従業員の「自由と責任」も重視しています。例えば同社は有給休暇や給与規定、人事考課制度といった通常の企業システムを採用していません。これは「一人の社会人として、自分の働き方を従業員自身が自由と責任をもって決める」という発想に起因するものです。

ともすれば無秩序になるリスクが潜んでいるにも関わらず、同社では徹底した「課題の明確化」や「コミュニケーション」「リーダーシップ」などを通し、各従業員が主体的に行動できる環境を作り上げています。同僚や上司、経営陣に対しても躊躇なく直接発言・報告し、課題をクリアするまでとことん議論・検証できる環境はその一例でしょう。

つまり、素晴らしい仕事を短時間で成し遂げるトップパフォーマーのみで構成された組織内においては、従来の人事考課制度は不要ということになります。人事考課制度が時間と労力を要する作業である事実を考慮すると、極めて効率的なアプローチです。

「最強の人材戦略」の課題

マッコード氏はこうした型破りな人事戦略や企業理念が、「万人向けではない」と断言しています。前述したように、Netflixは例え過去に素晴らしい功績を残した人材でも「今後の成長に適切でない」と判断した場合、躊躇なく解雇します。

これは「従業員には自分の未来を知る権利がある」という理念に基づくものですが、裏を返すと従業員は常に解雇の不安と戦いながら、緊迫した状況下での勤務を余儀なくされているということです。

ウォール・ストリート・ジャーナルの調査によると、回答した70人以上の従業員が「毎日解雇の不安に怯えている」と答えました。Netflixの人材戦略は「世界最大のエンターテインメント企業になる」という目標を追求する上で非常に合理的ですが、従業員の精神的な負担を軽減できる環境作りを配慮することで、より強靭な「最強の企業」を目指せるのかもしれません。
 

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